おばあちゃん

 

 

僕は東京で会社員をしながら、一人暮らしをしている。

 

とはいえ、地方出身者ではなく、実家も東京にある。

 

なので、仕事が休みの日に、月に一度は実家に帰り、そのついでに、実家近くの一軒家に住んでいるばあちゃんのところに寄ったりもする。

 

実家に帰ったついでとは言っても、実家に帰るよりも、ばあちゃん家に寄ることのほうが主な目的だったりする。

 

歳の差はあるけれど、ばあちゃんとは気が合うような気がするからだ。

 

じいちゃんは数年前に死んで、ばあちゃんは一人暮らし。

 

ということで、今日も実家に帰ったついでに、ばあちゃん家に遊びに来た。

 

お互い会話を交わすこともなく、ばあちゃんは部屋でテレビをぼんやり眺め、僕は縁側に座り、日向ぼっこをしている。

 

すると、「プ~」と音がした。

 

どうやら、ばあちゃんがおならをしたみたいだ。

 

僕はばあちゃんのほうに振り返り、言った。

 

僕「ばあちゃん、また屁してるよ」

ばあちゃん「へ?そうかい?今日はまだ芋食ってないんだけどねえ・・・」

 

しばしの沈黙。

 

僕は続けた。

 

僕「芋といえば、近所のスーパーで焼き芋売ってたから、今度買ってこようか?」

ばあちゃん「芋は芋でも、あたしゃ、じゃがいものほうが好きなんだけどねえ・・・」

 

と、こんなふうに、ばあちゃん家に来ても、特別なにかがあるわけでもなく、こういうどうでもいい会話をして、時間が過ぎていったりする。

 

でも、こんな時間が好きだったりする。

 

僕は、視線を再び庭に戻し、ふと思う。

 

普段は、ばあちゃんとは気が合う気がするから、遊びに来てると思っているけど、実際は、スピーディーな現代社会にはない、ゆったりした時間を過ごし、癒されにきてるのかもしれないと。