とある工場のお昼休み、休憩室にて。
午後に本社で会議があるため、作業着からスーツに着替えた朝間さん。
そわそわした様子の朝間さんが言った。
朝間さん「あー、なんか緊張してきた」
多田ちゃん「緊張もなにも、本社での会議、初めてじゃないでしょう」
朝間さん「まあ、そうなんだけど・・・」
多田ちゃん「・・・・・・」
一瞬の沈黙。
すると朝間さんが言った。
朝間さん「あー、なんかさっきよりドキドキしてきた」
多田ちゃん「なに言ってんすかあ。情けない」
朝間さん「でもさあ、この胸騒ぎは一体なんだろう?」
多田ちゃん「はあ?」
朝間さん「これが青春の胸騒ぎだろうか?」
多田ちゃん「朝間さん、だんだん言ってることが変になってきてますよ。それに、青春とか言ってる歳じゃないでしょう」
朝間さん「まあ、冗談冗談」
多田ちゃん「冗談て、全然笑えないですけど」
朝間さん「・・・・・・」
一瞬の沈黙。
すると、朝間さんが言った。
朝間さん「そういうこと言うんじゃないよ」
多田ちゃん「はいはい」
朝間さん「俺は君の上司だぞ?」
多田ちゃん「なに急にドヤ感出してきてるんすか。本社での会議を前に、緊張してる朝間さんはどこ行っちゃったんすか」
朝間さん「まあ、いいや。じゃあ、行ってくる」
多田ちゃん「えー、切り替え早っ!」
多田ちゃんとの会話を終えると、朝間さんはバッグを持ち、工場を出ていった。
工場を出てすぐの横断歩道で信号待ちをしている朝間さんに、初夏の日差しが照り付ける。
すると、その眩しさから、朝間さんの頭の中で、なにかの回路が切り替わったのか、先のことも考えず、はしゃいでいたあの頃や、昔付き合っていた彼女のことが、フラッシュ・バックした。
そんなフラッシュ・バックから、朝間さんは一瞬泣きそうになった。
でも今は、工場で働いてる大人の男だ。
これが現実だ。
あの頃に戻れるわけもない。
信号が青に変わる。
朝間さんは気持ちを切り替え、今の現実を生きるため、足を一歩踏み出した。
Awesome City Club/「青春の胸騒ぎ」
(つづく!)