ネットじゃなくて

 

 

とある週末、僕と彼女は、居酒屋に夜ご飯を食べに行った。

 

案内された席に着き、ビールと料理を注文した。

 

ビールが運ばれてくるまでの少しの間、僕はスマートフォンを見た。

 

ビールが運ばれてきて、僕はスマートフォンをテーブルに置き、僕と彼女は形だけの乾杯をした。

 

少しすると、料理も運ばれてきた。

 

スマートフォン片手に、ビールを飲みながら、料理を食べながら、会話をする。

 

付き合いも長くなると、これといって特別話すこともなく、話す話題といえば、ネットで仕入れた、芸能ニュースや噂話だったりする。

 

そんな感じで時間は過ぎ、お互いほろ酔いになったころ、彼女は、両手の手の平で、「トン」と軽くテーブルを叩いた。

 

「あれ?俺、なんか怒らせるようなこと言ったかなあ?」と僕は心の中で思った。

 

すると彼女が言った。

 

彼女「あのさあ」

僕「はい」

彼女「ネットじゃなくてさあ」

僕「はい」

彼女「目の前のことを信じよう?」

僕「え?」

彼女「現実を信じよう?」

僕「はあ・・・」

 

あまりにも真っ当なことを言う彼女に、僕は黙り込んでしまった・・・。