日曜日に休日出勤した朝間さんと多田ちゃんは、まだ車の中に居た。
走行中の車は、今度は湾岸沿いを走っていた。
朝間さんと多田ちゃんは、さすがに話すこともなく、無言が続く。
車内では、ラジオや音楽もかけておらず、車のエンジン音だけがする。
すると、対向車線から、青い戦車が走ってきた。
車内からでも聴こえるくらい、大きな音でファンキーな音楽を流しながら走ってくる。
そして、朝間さんと多田ちゃんが乗っている車とすれ違った。
思わず朝間さんは声を上げた。
朝間さんは「なに、あの青い戦車?」
多田ちゃん「え?戦車?」
朝間さん「いや、ほら、今、大音量で音楽流しながら走ってきた青い戦車」
多田ちゃん「なに言ってんすか~。普通の道路に戦車なんて走ってないでしょう」
多田ちゃんはそう言うと、バック・ミラーで、後方を確認したが、青い戦車は見えなかった。
多田ちゃん「朝間さん、青い戦車なんて走ってないじゃないっすか~」
朝間さん「え?嘘?」
朝間さんは振り向き、窓から後方を確認したが、青い戦車は見えなかった。
朝間さんが見た青い戦車は、朝間さんが見た幻だったのかもしれない。
でも、青い戦車が大音量で流していた音楽の、「教えて、愛の意味を」という一節が、朝間さんの耳に妙に残っていた。
いや、その音楽すら、朝間さんが聴いた幻聴だったのかもしれない。
朝間さんは窓から夜空を見上げた。
すると、チカチカ点滅する星が、海に落ちていった。
サニーデイ・サービス/「青い戦車」
(つづく!)